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熊本地方裁判所 平成元年(わ)548号 判決

本籍

熊本県鹿本郡植木町大字鐙田五四四番地

住居

右同

会社役員

藏座力夫

昭和二一年五月三〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官小畑勝義出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、熊本市内において、自己名義で飲食店三店舗、前田万里子名義で飲食店一店舗を経営するほか、不動産賃貸業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、飲食店の売上金の一部を除外し、簿外預金をするなどの方法により所得を一部秘匿した上

第一  昭和六〇年分の総所得金額が四〇七三万九三二八円で、これに対する所得税額が一五二五万九一〇〇円であるのに、同六一年三月一五日、熊本県山鹿市大字山鹿一三五二番地の山鹿税務署において、同税務署長に対し、自己名義で、所得金額が三三〇万四八五三円で、これに対する所得税額は一六万四〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出するとともに、同日同税務署長に対し、前田万里子を介し、同女名義で同六〇年分の所得金額は三二八万九九四七円で、これに対する所得税額は三四万五四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税額一四七四万九七〇〇円を免れ

第二  昭和六一年分の総所得金額が四五一〇万三九五二円で、これに対する所得税額が一七七二万一二〇〇円であるのに、同六二年三月一六日、前記山鹿税務署において、同税務署長に対し、自己名義で、所得金額が六三九万五〇八六円で、これに対する所得税額は六一万一七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出するとともに、同日、同税務署長に対し、前記前田を介し、同女名義で昭和六一年分の所得金額は三七五万九二〇四円で、これに対する所得税額は四二万六九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税額一六六八万二六〇〇円を免れ

第三  昭和六二年分の総所得金額は四九四五万五九三七円で、これに対する所得税額は一八三六万二八〇〇円であるのに、同六三年三月一四日、前記山鹿税務署において、同税務署長に対し、自己名義で、所得金額は七七四万六〇九四円で、これに対する所得税額は八四万五五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出するとともに、同月二日、同税務署長に対し、前記前田を介し、同女名義で所得金額は四五二万二九七〇円で、これに対する所得税額は三九万八三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税額一七一一万九〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示各事実について被告人の当公判廷における供述のほか、証拠等関係カード(検察官請求分)記載の次の番号の証拠

判示各事実について

甲の14ないし77

乙の1ないし14

判示第一の事実について

甲の2、6、9、10

判示第二の事実について

甲の3、7、11、12

判示第三の事実について

甲の4、8、13

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 松信尚章)

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